記録的短時間大雨情報とは 発表されたときにとるべき行動
この記事では、記録的短時間大雨情報とは何か、発表されたときはどのように行動すれば良いのか、さらにその発表基準などについて、詳しく解説します。
記録的短時間大雨情報とは
その地域にとって、土砂災害や浸水害、中小河川の洪水災害などの発生につながるような、稀にしか観測しないほどの雨が降っていることをお知らせして、大雨による災害への警戒を呼び掛けます。
記録的短時間大雨情報は、地震情報と同じように、実際に基準を超える雨量が観測・解析されると、テレビの気象速報や自治体からの防災メール、気象庁や民間気象会社のwebサイト・アプリなどでその情報が伝えられます。
記録的短時間大雨情報の内容と発表例
記録的短時間大雨情報で発表される情報内容の例
なお、場所の名前に「付近」や、雨量に「約」がついたりつかなかったりしているのは、雨量計で観測されたか、気象レーダーと雨量計のデータから解析されたかによる違いです。
「解析」の場合は、実際に雨量を観測しているわけではなく、あくまで気象レーダーと周辺の雨量計のデータから推定した雨量です。このため、「掛川市付近で約120ミリ」のように、地域名に「付近」、雨量に「約」がつきます。
一方、雨量計で実際に観測された地点では、「掛川市粟ヶ岳で112ミリ」のように、具体的な地点名や数値が伝えられます。
記録的短時間大雨情報が発表されたときにとるべき行動
記録的短時間大雨情報が発表されたときの行動
実際のところ、過去に記録的短時間大雨情報が発表された際には、発表対象となった市町村の約6割で土砂災害や浸水害などの災害が発生していたという調査結果もあります。
情報を見聞きしたら、すみやかに以下の行動をとりましょう。
①まずは詳細情報を確認しましょう
記録的短時間大雨情報は、速報性を重視した「気づき」のための情報です。その地域のどこかで猛烈な雨が降っている緊急の合図ですから、ご自身のいる地域に対してこの情報が発表されたら、まずは詳しい情報の入手を始めましょう。
お住まいの場所がハザードマップで土砂災害警戒地域や浸水想定区域内の場合には、大雨による災害が発生するおそれがあります。
気象庁HPや防災情報のアプリなどで「大雨による災害危険度分布(キキクル)」を確認することで、具体的にどの場所で、どんな危険性(土砂災害、洪水害、浸水害など)が高まっているかを確認することができます。合わせて、自治体からの避難情報(避難指示、高齢者等避難など)や近隣河川の水位情報などを確認しましょう。
また、今は大丈夫でも、今後状況が悪化する可能性もあります。引き続き、情報をこまめに確認しましょう。
◆国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
◆気象庁「大雨による災害危険度分布(キキクル)」
◆国土交通省「川の防災情報」
ご自身がいる場所で危険度レベルが高くなっている場合や、避難情報が発令されている場合は、すぐに避難を開始しましょう。
また、危険度レベルがそれほど高くない場合や避難情報がでていない場合でも、少しでも身の危険を感じたら、自主的に避難を検討しましょう。
<土砂災害警戒地域内の場合>
土砂災害警戒地域内にいる場合は、土砂災害警戒地域外の避難所やその他の安全な場所(親戚や知人の家、ホテルなど)へ避難しましょう。土砂災害の場合は「立ち退き避難」が原則です。
ただし、屋外の移動がかえって危険な状況になっている場合には、「垂直避難」でやり過ごしましょう。建物の2階以上の山や斜面の反対側の部屋に避難をしてください。
<浸水想定区域内の場合>
浸水想定区域内にいる場合も、同様に避難所やその他の安全な場所(親戚や知人の家、ホテルなど)へ避難しましょう。ただし、以下のすべての条件に当てはまる場合は、「屋内安全確保」または屋内の上の階へ避難する「垂直避難」も可能です。
・家屋倒壊等氾濫想定区域外である
・想定浸水深より居室が高い
・在宅避難するための備蓄が十分ある
避難の仕方については、以下の記事でも詳しく解説しています。
◆知る防災「大雨で避難するときは」
【もっと詳しく①】記録的短時間大雨情報の発表基準 「数年に一度程度の大雨」とは
記録的短時間大雨情報の1時間雨量の発表基準(2025年11月現在)
<記録的短時間大雨情報の発表基準>
記録的短時間大雨情報の発表基準は、具体的には以下の3つを満たしたときです。
・大雨警報発表中
・大雨の危険度分布(キキクル)で「危険(警戒レベル4相当)」ランク出現中
・基準値を超える1時間雨量を観測または解析
なお、1時間雨量の基準値は地域によって異なります。これは、「どれくらいの雨が降ると危険か」は単純に雨量の多さだけでは決まらず、普段から雨の多い地域か少ない地域かで、災害の起こりやすさは違うからです。
その上で「その地域で数年に一度」の基準として、歴代1位または2位の1時間雨量の記録を参考に、概ね府県予報区ごとに設定しています。80〜120mm程度の地域が多く、例えば東京都(小笠原諸島以外)や大阪府は100mm、鹿児島県は120mm、福井県は80mmです(2025年11月現在)。
【もっと詳しく②】大雨警報や警戒レベルとの関係
同じ大雨に関する情報でも、「大雨警報」は”予想”に基づいて出される情報であるのに対し、「記録的短時間大雨情報」は”観測などの実況”に基づいて出される情報という点で異なります。
記録的短時間大雨情報の発表条件でお伝えしたように、記録的短時間大雨情報は、大雨警報発表中に発表されます。つまり、予想に加えて、実際に記録的な大雨が降っていることを伝えることで、災害に対してより一層の警戒を呼び掛けます。
この記録的短時間大雨情報の発表を始めるきっかけとなったのが、昭和57(1982)年7月23日〜25日にかけて発生した「昭和57年7月豪雨(長崎大水害)」です。長崎市を中心に、死者・行方不明者が299人にも及びました。
当時、すでに7月に何度も大雨警報が発表されていたことで、市民が「警報慣れ」をしてしまっている状態にありました。このため、1時間雨量100mm以上の雨が降り続く異常なほどの大雨になっていた関わらず、警報が発表されても「今回も大丈夫だろう」と受け取られてしまい、事の重大さ・危険性が適切に伝わらなかったのです。
あのとき、記録的な大雨になっている事がきちんと伝わっていたら…その教訓から、大雨警報とは別に、その地域において短時間で記録的な大雨が降っている状況をすぐに伝えるべきとし、1983年から「記録的短時間大雨情報」として発表するようになりました。
警戒レベルとそれに対応する防災気象情報
