最近目にするようになった「白いちご」。世界初の白いちごは「初恋の香り」という品種で、 20年の歳月をかけて日本で誕生しました。品種登録されたのは2009年のこと。当時の白いちごは高価な贈答品でしたが、このところデパ地下や品揃えの良いスーパーなどでも購入できるようになりましたね。
白いちごは、なぜ白いのでしょうか。ホワイトアスパラガスのように、太陽の光に当てないで育てているというわけではありません。いちごが赤くなるのはアントシアニンという色素によるもので、光に当たることで赤色が促進されます。しかし、白いちごには、アントシアニンがほとんど含まれていません。そのために光に当たっても、果実の中はもちろん、果皮も白いいちごになります。果実が白いまま完熟するのが白いちごなのですね。
いちごは、赤く色付いているほど甘くて美味しいというイメージがあります。色が白いと熟してなさそう、甘くなさそうと感じてしまうかもしれませんが、赤いいちごと同じくらいの糖度があります。白いちごで注目したいのが「香り」。白いちごは、桃やパイナップルのような甘い香りの品種が多いのが特徴です。より繊細な風味を堪能したいですね。
◆「初恋の香り」
主な産地:山梨県
品種登録:2009年
山梨県の種苗会社「三好アグリテック」と福島県の育種者によって共同開発された品種。「白いちご」の先駆けとして話題になり、百貨店などで非常に高価な価格でギフト向けに販売されました。名前は甘い香りと、初恋をしたときの気持ちなどをイメージに付けられたそう。果実が熟すにつれて、白からピンクへ変化します。香りが良く、甘味があり酸味はおだやかです。
◆「桃薫(とうくん)」
主な産地:長崎県、茨城県
品種登録:2011年
農研機構が品種改良したうすいピンク色のいちご。いちばんの特徴は桃のような香りがすること。強い香りと甘みが楽しめます。各地でブランド化も進められており、長野県軽井沢では「軽井沢貴婦人」として、北海道北斗市では「もものか」という名称で出荷されています。
◆「天使の実」
主な産地:佐賀県
品種登録:2014年
佐賀県唐津市で5年の歳月をかけて誕生した希少な白いちご。約60gと大粒で、大きいものでは1玉100gにもなります。洋梨やパイナップルなどトロピカルな香りとやさしい甘みが特徴。やわらかい果肉で酸味がなく、まろやかな味わいです。
◆「淡雪(あわゆき)」
主な産地:鹿児島県、佐賀県、熊本県
品種登録:2013年
鹿児島県で育成された白いちご。果皮が白みがかった淡いピンク色をしています。果肉は淡い橙赤色で、果実はやや大きく縦長の円錐形。ほどよい甘味があり、酸味がおだやか。比較的流通量も多く、手の届きやすい価格も魅力です。
◆「パールホワイト」
主な産地:奈良県、佐賀県
品種登録:2015年
奈良で育成された、白地に赤のコントラストが映える白いちご。果実の形は縦長の卵円形をしていて、大きさは中程度。果皮は桃色がかった白色。ほどよい甘味があって酸味が少なく、やさしい風味が特徴です。
「初恋の香り」が話題になったことで、全国各地で品種改良が進み多くの品種が誕生している白いちご。以前はおどろくほど高価だったお値段も、品種によっては比較的購入しやすい価格になってきました。白いちごの登場で楽しみが広がったいちごの世界。紅白ともに、今だけの春の味覚を満喫してみてはいかがでしょうか。
参考文献
吉田企世子『旬の野菜の栄養事典 最新版』エクスナレッジ
参考サイト
農林水産省旬の食材百科三好アグリテック